故ヨーロッパ国旗情報:ローマ帝国編

この記事ではローマ帝国の「国旗」に相当する軍旗の由来と色に込められた意味について解説しています。“SPQR”の語源、赤地に金文字の象徴性、軍団と元老院の関係などに注目し、古代ローマの誇りと権威を示す軍旗について詳しく探っていきましょう。

ローマ帝国の国旗の由来&色の意味|“SPQR”は帝国の誇りと力

ローマ帝国の軍旗

 

軍旗の基本情報

通称 軍団旗(ヴェクシルム / Vexillum)
採用国 Roman Empire(ローマ帝国)
採用年 紀元前1世紀ごろ(帝政以前の共和政末期から使用)
縦横比 不定(軍旗ごとに異なる)
デザイン
  • 赤地に金の「SPQR」の文字
  • 金色の鷲(アクィラ)と月桂樹の枝を配した軍旗
  • 上部に横木を通した縦掲揚のスタイル
色の意味
  • 赤:戦いと力、ローマの軍事的権威
  • 金:栄光と支配、皇帝の権威
備考

「SPQR」は「Senatus Populusque Romanus(元老院とローマ市民)」の略で、国家と軍の正統性を示す標語。
鷲はローマ軍団の象徴であり、失われることは軍の大恥とされた。

赤地に金の鷲、そして大きく刻まれた “SPQR” の文字――この印象的な旗は、ローマ帝国の軍団旗(ヴェクシルム / Vexillum)です。国家そのものというよりも、ローマ軍を象徴するシンボルとして使われていましたが、まさにローマという巨大な帝国の誇り・力・統制がすべて詰まった一枚なんです。この記事では、この軍団旗のデザインや色の意味、背後にある思想や象徴をわかりやすくひもといていきます!

 

 

ローマ帝国とは

トラヤヌス帝(在位:98年~117年)治世のローマ帝国の最大版図

 

ローマ帝国は、古代世界で圧倒的な影響力を持っていた超大国です。今のイタリアにあった都市国家ローマ(古代ローマ)が、征服と領土拡張を繰り返しヨーロッパ・北アフリカ・中東にまで支配を広げる巨大帝国へと成長した姿―ともいえますね。もともとは「ローマ共和国」として市民による政治が行われていましたが、内乱の時代を経て、初代皇帝アウグストゥスが登場し、帝政ローマがスタートします。

 

ローマ帝国の強みは軍事力だけではありません。道路網や法律、建築、ラテン語、さらにはキリスト教などを通じて、征服地に「ローマのやり方」を定着させていきました。その文化的インフラは、帝国が崩壊した後も長く影響を残し、現代のヨーロッパ文明の土台になっているんです。

 

そしてそんな帝国の力を支えていたのが、ローマ軍団。その軍団の先頭で誇らしげに掲げられていたのが、この記事で取り上げる軍団旗「ヴェクシルム」です。そこには、ローマの誇り、国家の正統性、そして兵士たちの覚悟が込められていました。

 

ローマの軍団旗“ヴェクシルム”とは?

冒頭の画像にある旗は、古代ローマの軍団で使われたヴェクシルム(Vexillum)というタイプの軍旗。 現代の「国旗」とはちょっと違っていて、各軍団・分遣隊が自分たちの部隊を識別するための旗として用いられていました。
とはいえ、掲げられたその瞬間に「ローマの威光ここにあり」というメッセージを発していた、まさに軍と国家の誇りを背負うシンボルだったんです。

 

通常は赤い布金の刺繍でデザインされ、上部には横棒を通し、先には金属製の槍先を飾るなど、かなり格式高い作りをしていました。

 

デザインに込められた意味

この旗にはローマ人の政治思想、軍事的誇り、宗教的信念までが盛り込まれています。パーツごとに詳しく見ていきましょう。

 

“SPQR”=ローマ国家そのものを示す言葉

旗の最上部に金で書かれている “SPQR” は、ラテン語の Senatus Populusque Romanus の略で、「元老院とローマ人民」という意味。
これはローマ国家の公式な名義であり、共和国時代から帝政時代にかけて、全ての公的行為の名の下に掲げられた言葉なんです。

 

この文字が旗に入っていることで、「この軍はローマ国家を代表している」「国家のために戦っている」という正当性と誇りが示されていました。

 

黄金のワシ(アクィラ)はローマ軍団の魂

中央の金の鷲(アクィラ / Aquila)は、ローマ軍団の象徴中の象徴。
鷲は神々(特にユピテル=ゼウス)と結びついた神聖な動物であり、高いところから全体を見渡す「王の視点」を持っているとされました。

 

各軍団にはこのアクィラを持つ“アクィリフェル(鷲旗持ち)”という兵士がいて、命がけでこれを守りました。もし敵に奪われようものなら、それは軍団全体の恥とされるほど重要だったんです。

 

月桂樹の枝は勝利と栄光の象徴

鷲の下にある月桂樹(ローリエ)の枝は、古代ローマにおける勝利・栄光の象徴です。
勝利した将軍や皇帝が凱旋式(トリウンフ)で月桂冠をかぶったように、軍団旗にもその勝者の精神がしっかり刻み込まれていたんですね。

 

色の意味:赤と金が示すローマの美学

ローマ軍団旗といえば「赤と金」の組み合わせが定番。これにはしっかりした意味があったんです。

 

赤は力・血・ローマの誓い

は、ローマ軍人が命をかけて戦う覚悟と、流された血を象徴する色。そしてそれは同時に、軍団の団結と忠誠の色でもありました。
また、赤は古代ローマにおいて神聖な色とされ、戦や儀式ではよく使われていたんです。

 

金は神聖性と皇帝の威厳

金色は、太陽・神・皇帝といった最高の存在を象徴します。鷲の姿やSPQRの文字が金で刺繍されているのは、ローマ軍団=ローマ国家の化身であることを視覚的に伝えるため。

 

つまり、赤=誓いと覚悟、金=神聖と正当性という、ローマの軍事美学がこの色に集約されているわけです。

 

まとめ:旗が語る“帝国の心”

このローマの軍団旗(ヴェクシルム)は、単なる装飾や部隊識別用じゃありませんでした。そこにあるのは、国家への忠誠・神への祈り・そして戦場に立つ誇り

 

  • SPQRでローマ国家の正当性を主張し
  • 鷲で軍団の魂と勝利を示し
  • 赤と金で覚悟と神聖を視覚化する

 

――こんな旗を掲げて進軍していたローマ軍団、やっぱり只者じゃないですよね。まさにこの旗1枚に、ローマ帝国そのものの精神が映し出されていたんです!