現代ヨーロッパ国旗情報:キプロス編

この記事ではキプロス国旗の由来や色の意味について解説しています。島の形を描いたデザイン、オリーブの枝の平和的意味、民族融和の願いなどに注目し、国旗に込められた統一への想いについて詳しく探っていきましょう。

キプロス国旗の由来&色の意味|平和と統一を願う島の象徴

キプロスの国旗

 

国旗の基本情報

採用国 Cyprus(キプロス)
採用年 1960年(イギリスからの独立に伴い採用)
縦横比 3:5
デザイン
  • 白地に銅色のキプロス島の地図と、その下に交差する2本のオリーブの枝
  • 民族的中立と平和共存の象徴として設計された独特な国旗
色の意味
  • 白:平和
  • 銅色:島の名の由来ともされる銅資源
  • オリーブの枝:ギリシャ系・トルコ系住民の平和と友好
備考

国家の中立性を強調するため、ギリシャ・トルコ両国の色や象徴を避けて設計された。
分断状態の北部(北キプロス・トルコ共和国)は別の旗を使用している。

真っ白な背景に、キプロス島の形と2本のオリーブの枝――キプロスの国旗は、数ある国旗の中でも「地図が描かれた珍しいデザイン」として知られています。でもこの旗は単なる島のマップではなく、深刻な分断の歴史と、それを乗り越えたいという願いが込められているんです。この記事では、キプロス国旗に込められた色や形の意味、その成り立ちと歴史背景、そして世界の中でどんな立ち位置を表しているのかを、わかりやすくご紹介します。

 

 

キプロスってどんな国?


キプロスは、地中海の東側に浮かぶ島国で、ギリシャとトルコの間に位置しています。地理的にはアジアに分類されることもありますが、文化的にはヨーロッパと中東が交差する場所なんですね。首都はニコシアで、ギリシャ系とトルコ系の住民が共存している多民族国家です。

 

しかし、1974年に島が南北に分断されて以降、南側(ギリシャ系)を中心にキプロス共和国が国際的に承認されており、北側にはトルコ系住民による「北キプロス・トルコ共和国」が実効支配しているという、非常に複雑な状況が続いています。

 

だからこそ、国旗のデザインには平和・統一・中立といったメッセージが強く込められているんです。

 

国旗デザインの意味・由来

キプロスの国旗は、中央に島のシルエット、その下に2本のオリーブの枝、背景は白という非常にシンプルかつ象徴的な構成です。ここに、民族の和解と平和共存への強い想いが表れています。

 

白い背景は「平和と中立」を意味する

背景の白色は、戦争のない世界、民族間の対立のない社会を表す色。どんな勢力にも偏らない中立の立場を強調するため、意図的に装飾を排除した純白のキャンバスが使われているんです。

 

特定の宗教や政治的色を排したこの白は、分断を乗り越えたいという願いの象徴でもあります。

 

オレンジ色の島の形は「銅の島」を示す

中央に描かれたキプロス島の形は、現実の地図に近い正確なシルエットになっています。色がオレンジ(銅色)なのは、この島が古代から銅の産地として知られていたことに由来しています。

 

ちなみに、「キプロス」という国名も、古代ギリシャ語のキュプロス(銅)に由来しているとも言われていて、この金属が島のアイデンティティの一部になっているんです。

 

2本のオリーブの枝は民族の和解

島の下に描かれた2本のオリーブの枝は、ギリシャ系住民とトルコ系住民の共存を象徴しています。オリーブは平和のシンボルであると同時に、地中海の文化を代表する植物でもありますよね。

 

つまり、「この島に住むすべての人が、争わずに一緒に暮らせますように」という平和へのメッセージが、この枝に込められているんです。

 

似てる国旗

デザイン 特徴
キプロス 白地に銅色の島の形とオリーブの枝。国土のシルエットを直接描いた珍しい国旗で、平和とギリシャ系・トルコ系住民の共存を象徴する。
コソボ 青地に金色の国土の形と6つの白い星。キプロスと同様に国土を描いているが、こちらは多民族共存を星で表し、国際的承認を意識したデザイン。

 

キプロス国旗のように地図が描かれた国旗は、実は世界的にもかなり珍しく、コソボくらいです。
国の形+平和の象徴という構成はキプロスならでは。中立性と共存をこんなにもストレートに伝えている国旗は、他にあまり見られませんね。

 

国旗の変遷にみる国の歴史

現在の国旗は独立と同時に誕生したものですが、それまでにもキプロスは他国の支配下でさまざまな旗を掲げてきました。その変遷をたどると、島が抱えるアイデンティティの揺れが見えてきます。

 

1960年、独立と同時に現在の国旗を採用

キプロスは1960年、イギリスからの独立を果たします。その際、「どちらの民族にも偏らない」ことを最優先にして、白地に島とオリーブの非宗教的・非民族的なデザインの国旗が採用されました。

 

これは、「新しい国家は、民族の壁を越えて作られるべきだ」という理想の出発点だったんです。

 

1974年、島の分断とトルコ側の別旗登場

1974年、ギリシャ系によるクーデターと、それに対するトルコ軍の介入で、キプロスは南北に分断されます。以降、北部ではトルコ国旗に似た「北キプロス・トルコ共和国」の旗が使用されるようになり、事実上ふたつの旗が並び立つ状態に。

 

でも、国際的には南のキプロス共和国の国旗のみが正当な国旗とされ、国連加盟や外交関係もすべてこの旗で行われています。

 

現在も続く統一への模索

現在の国旗は変わらず統一国家の象徴として使われていますが、国の実態が分断されたままというのが現状です。それでもこの旗は、いつか再びひとつになることを願って掲げられ続けているんです。

 

まとめ:旗が伝えてくれるもの

キプロスの国旗は、世界でも珍しい「国土の形」が描かれたデザイン。でもそこに込められているのは、過去の痛みを乗り越えて平和に向かいたいという、国民の静かな願いなんです。

 

白は平和、オレンジは銅の大地、オリーブは共存――この旗は、キプロスという島が争いの歴史と共に、それでも希望を持ち続けてきたことを物語っています。

 

まさに「分断された国の、理想を掲げる旗」。それがキプロスの国旗なんですね!